売り上げを10倍以上伸ばした商店がやっていた、大切なひと手間とは?
モノの裏側に秘められた、あふれる思いの物語。共感が生まれてこそ、モノは売れる
その雑貨店とは、中川政七商店。
もともとは江戸時代から続く老舗の麻織物問屋でした。家業を継がずにサラリーマン生活を送っていた中川さんが家に戻り、赤字続きだった問屋を小売業に変えて13年。現在では全国各地に55もの店舗を展開しています。
扱うのは、職人の技や発想が光る工芸品の数々。いずれも日常の暮らしに密着した生活用品です。番組の中では、形状に工夫してゴマをすりやすくしたすり鉢や、髪と地肌にやさしい竹のブラシ、普段使いできる漆器などが紹介されていました。
中川政七商店には、大きなこだわりがあります。ただモノを売るのではない。モノの裏側にある職人の思い、地域に培われた伝統や技術、そこに価値を見出し値段をつける。そのために、モノの裏側にあるストーリーを自分たちなりにくみ取り、一つの物語として何とか伝えようと取り組む。そこから会話が生まれればきっと楽しいし、その物語に共感してもらえたとき、はじめてモノが売れるのではないか。
同じような機能を持つモノは、多分どこの家にもある。それでも買おうと思ってもらうには、そこに何らかの気づきや驚き、共感が生まれてこそ。
これが中川政七商店のこだわりであり、戦略ということなのです。
たった1枚のPOP広告から、使うイメージや得られる心地よさへと想像がふくらむ
私が特に注目したのは、番組内でも大きく取り上げられていた、竹のヘアブラシに添えられたPOP広告です。150字程度の文字だけが書かれたカードの中に、次のような情報がぎっしりと詰まっていました。
・ 軽くて丈夫で静電気が起きにくい竹素材のピンを使用していること
丁寧なコピー作りに取り組み続けた結果、売り上げ10倍超へ
中川政七商店がすくい上げたのは、その商品に注がれた作り手の思いや愛情。それを、決して冗長になることなく、精一杯の思いを寄せて正しく丁寧に伝えている。だからこそ、ふと目にした読み手にも気づきや驚きを与え、それが共感を生み、「うちに連れて帰って私のお気に入りにしたい」という気持ちを呼び覚ますのです。
質よりも価格の安さが歓迎され、無造作にモノが売られては消費される時代。POPには商品名のほか、値段やサイズ、ごく簡単な商品説明さえ記してあれば一応の役割は果たします。そこに、商品の裏側に存在する物語を掘り起こし、書き添えていくのは、なかなか手間ひまのかかる作業です。一つひとつの商品に興味と愛情を持ってしっかり向き合わなければ、とてもできるものではありません。でも、それをコツコツと続けていった結果が、売り上げ10倍超という数字につながっているのです。
これこそ、コピーの底力。
そして、コピーライターとはこうあるべきもの。
そう再認識した朝でした。
2019年5月8日(水)放送
おはよう日本 けさのクローズアップ「令和に生きる」
https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/05/0508.html
うすいふじこ
コピーライター、プランナー
コピーライター歴、約20年。紙媒体からウェブサイトまで、商品広告、企業広告、フリーペーパーや広報誌の編集・制作、会社案内、イベントのスローガン、インタビュー記事など、数多くの制作に携わってきました。
これまで自分なりにやってきたコピーライティングの仕事の進め方やコツ、また、言葉について日々考えたことなどを公開していきます。
「こんなテーマで聞いてみたい」ことなどありましたら、リクエストしてください。可能な限りお答えしていきます!
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