記事一覧

  1. ホーム
  2. ブログ
  3. うすい流 実例で見るキャッチコピーの引出しの作り方 1.同軸上の言葉で遊ぶ

うすい流 実例で見るキャッチコピーの引出しの作り方 1.同軸上の言葉で遊ぶ

2020.12.01

文/うすいふじこ

ひと言で、はっと人を振り向かせたり、なぜか心に引っかかって忘れられなくなる「キャッチコピー」。

一体、どうやって作ったらいいのでしょうか。

そんな疑問へのヒントとなるよう、日常生活の中で見かけて“いいな”と思ったキャッチコピーを取り上げて分析し、パクりにならずにお手本にできるような「法則」を1回に1つ読み解いていきます。

なぜ「いい!」と思ったか分析してみた

今回取り上げるのは、全日空がこの秋からのキャンペーンで打ち出している、こちらのキャッチコピー。

さぁ、新しい思い出を予約しよう。

電車の扉の上の動画広告で見かけたのですが、一読して「とてもいい!」と思いました。

何が「いい!」と思ったのか、早速、分析していきましょう。

使用している単語を見てみる

「思い出」

「思い出」とは、「強く心に残っている過去のこと」。「良い思い出」も「悪い思い出」もありますが、美しい映像と共にこの言葉が与えられたら、ほとんどの人は「良い思い出」を連想するでしょう。

「新しい思い出」

思い出には「良い/悪い」だけでなく、「新しい/古い」もあります。「今」から近いか遠いかの違いですが、どちらも過去のものです。

「予約」する

そして、ここがチェックポイントです。「予約」する、とは、未来への約束です。「新しい思い出」を「予約」する、つまり、これから予定するのですから、この「新しい思い出」は、まだ「思い出」にはなっていないのです。

構造の仕組みを見てみる

時間軸

「思い出」と「予約」は、一つの時間軸において対極に位置する言葉です。「思い出」は過去のもの、「予約」は未来へ向けて行う行為です。同軸上で対極にある言葉が一つの文の中に入っていることで、何かとても気になる、心に引っかかる効果を生み出しています。

確かな約束

このように読み解いていくと、「さぁ、新しい思い出を予約しよう。」は、「この旅を終えた時、あなたは新しい良い思い出を手に入れているよ」と言っていることになります。それはつまり、「この旅が、あなたに何か素敵な経験をもたらすよ」と約束していることになるのです。だから、このコピーを読むと期待で胸が膨らみ、ワクワクしてしまうんですね。

コピーライターの思考を想像してみた

このキャッチコピーを無理矢理、普通の言い方に置き換えてみるとしたら、おそらく次のようになるでしょう。

さぁ、次の旅を予約しよう。

とても平凡で当たり前です。
これをキャッチコピーにしても別に構いませんが(勇気があれば)、当たり前すぎて心には残りません。

では、心にさざ波が起こるような印象的なコピーを作るために、コピーライターがどんな思考を巡らせたか想像してみます。

まず、この広告で伝えたい想いや、それを裏付ける事柄(企業の商品やサービスがもたらすもの等)をいくつも挙げ、取捨選択しながら考えていったと思います。残ったのは、こんな想いです。

これから予約してもらうこの旅が、きっと思い出に残る素敵な旅になることを伝えたい。
旅のドキドキワクワク感は予約した時から始まるもの。予約することで旅が何倍も楽しめることを伝えたい。
これらのことを、できればそうとは言わずに、強いイメージとして伝えたい。
そこから醸成される気分を、「予約」という行動につなげたい。

思考を広げ、重ねていくうちに、抽出した数多くの言葉の中から「思い出」と「予約」という時間軸上で対極にある言葉を見つけ出しました。一文の中で組み合わせるにあたり、「思い出」というワードの時間軸上の位置をずらすことで心地よい違和感が生まれ、心にコツンと響く素敵なキャッチコピーが完成しました。大成功です。

ほかの実例を探してみた(SEIYUの例)

このように、「同軸上で対極にあるものを掛け合わせる」というスタイルは、心に引っかかるコピー作りのひとつの法則として使えると思います。

この法則を応用して成功している例を、過去の名キャッチコピーから探してみました。こちらは、構造の仕組みとしてはさらに上級編となります。

安いクセして。

現在も使われているSEIYU(西友)のキャッチコピーです。

西友のHP:https://cp.seiyu.co.jp/line/yasuikuseshite/

SEIYU(西友)

参考のために、ボディコピーもご紹介します。

安いクセして、新鮮であること。
安いクセして、ちゃんとおいしいこと。
安いクセして、ゆるぎない安心があること。

そして一時的な安売りではなく、
毎日あたりまえのように安いこと。

そんな店を目指すことで、
この国の食卓幸福度は
きっと上がっていくはずだから。

安いクセして。
SEIYU

「対極の言葉は、どれ?」と探してしまいましたか?
このキャッチコピーは、「同軸上の対極の法則」の進化形、超上級編です。

このコピーの中で、価格軸上の「安い」の対極ワードである「高い」は、姿を隠しています。それをあらわにして、このコピーを無理矢理最後まで書くとしたら、こうなります。

安いクセして、高い。

「高い」は、価格軸上の「安い」の対極として現れるのですが、何か引っかかりますよね。ここに仕掛けがあります。

安いクセして

マジックの種明かしをしましょう。
ここでは、隠されている「高い」を支点として、実は別の軸への乗り換えが行われているのです。その軸とは「品質が高い/低い」という、いわば品質軸です。

価格は「安い」のですが、鮮度やおいしさ、安全性などをひっくるめた品質は「高い」。価格軸「安い」の対極として「高い」を連想した読者は、「あっ、“高い”のは価格じゃなくて“品質”なんだ」と気づきを与えられてしまうのです。そして、ボディコピーを読むと、話はさらに「幸福度」の高さにまで及んでいます。

先ほど、無理矢理最後まで書いてみたこのコピーに、さらに無理矢理、詳細まで書き加えると、こうなります。

価格は安いクセして、品質は高い。

・・・種明かし込みですべてを言ってしまうと、気づきも感動もなくなり、面白くもなんともなくなってしまいますね。

振り返って元のキャッチコピーを見てみると・・・

安いクセして。

ボディコピーの援護射撃があるとは言え、完全な文章にさえなっていない短いキャッチコピーで、価格から品質まで連想させ、伝えてしまうのは、「すごい!」としか言いようがありません。

初級編も探してみた(ことわざの例)

では、「同軸上の対極の法則」がもっとわかりやすい初級編はないかな、と探してみたところ、ことわざに様々な好例があることに気づきました。
ちなみに、ここで言う「初級」とは、「構造の見え方がより分かりやすい」という意味であって、決して、完成品であることわざの出来のことではありません。念のため。

遠くの親戚より近くの他人(遠近軸)
帯に短し、たすきに長し(長短軸)
あばたもえくぼ(美醜軸)

など、いくらでも出てきます。

ことわざの場合は分かりやすさが求められるので、ストレートに「対極語」をぶつけることで意味や内容を際立たせていますが、コピーの場合は、一見しただけではそれらが同軸上で対極にあることがわからないよう、ひとひねりが加えられていることが多くなっています。そうすることで、興味を引いたり、味わいや印象深さが際立ってくるとも言えるでしょう。

おわりに

ところで、この法則が理解できたからと言って、すぐに優れたキャッチコピーが書けるかというと、話はそう簡単ではありません。

結局のところ、すべての資料を読みあさり、企業や商品の魅力を洗い出し、どんな要素をどんな風に伝えたいか考え抜き、そこからまた連想と妄想を繰り返し、可能性のあるすべてのワードを拾い出し、新たに考え出し、並べたり組み合わせたり膨らませたり削ったりし、さらに取捨選択し、いろいろやった挙げ句に出来上がるのが、キャッチコピーだからです。

でも、知っておくのは悪くありません。引き出しが一つ増えれば、それだけ思考を広げるチャンスが増えるわけですから。

今回のおさらい
【心に残るキャッチコピーの法則のひとつ:同軸上の対極の法則
同軸上の対極の言葉は、組み合わせ方や、ずらし方次第で心地よい違和感を生む。さらにひねりを加えると、意外性を超える感動が生まれる場合がある。

いつか使う時が来るかもしれません。覚えておいて損はないでしょう。

この記事を書いたのは

  • image

うすいふじこ

コピーライター、プランナー
コピーライター歴、約20年。紙媒体からウェブサイトまで、商品広告、企業広告、フリーペーパーや広報誌の編集・制作、会社案内、イベントのスローガン、インタビュー記事など、数多くの制作に携わってきました。
これまで自分なりにやってきたコピーライティングの仕事の進め方やコツ、また、言葉について日々考えたことなどを公開していきます。
「こんなテーマで聞いてみたい」ことなどありましたら、リクエストしてください。可能な限りお答えしていきます!

ご意見やご質問など...

ご感想やご意見など、お気軽にコメントをお残しください。皆様の反応を元に新たな記事の参考にしたり、記事を修正したりしております。 ご意見やご質問には親身にお答えさせていただき、皆様とつながれることを楽しみにお待ちしております。

メールアドレス

コメントを送信する

関連記事

オフィスアンツ メールマガジン

オフィスアンツからWEB制作や集客に興味のあるあなたに有用な情報を提供します。
 ・ 制作・マーケティングなどの意見交換を兼ねた交流会のご案内(過去年1回程度10~20人くらいで実施)
 ・ セミナー・勉強会のご案内
 ・ 有用な記事のご案内
あなたのメルマガ登録をお待ちしております。
オフィスアンツからの営業などは一切ありません。上記のメール配信の目的のみメールアドレスを使用します。
また、解除したいときには、メルマガにご返信いただければ、責任をもってメールマガジンを解除するとともに、メールアドレスを削除いたします。

メールマガジンに登録する

※当サイトに掲載されている画像等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。無断転載、無断使用した場合は損害賠償を請求します。