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ユーザ調査(インタビューを実施する)

文/ 加藤春樹

ここでは、お客さまの”本質的なニーズ”を探るためのユーザ調査を行います。
その”本質的なニーズ”がなぜ重要か? プレゼントに例えて考えてみましょう。
まず、「相手が欲しいと言っていたもの」は、表面的なニーズです。
それに対し、「相手自身も気づいていなかったもの」が本質的なニーズなのです。
どちらが相手に感動を与えることができるでしょうか?
表面的ニーズで選んだプレゼントは、相手も予想がつきそれほど喜んでくれません。しかも、他の人のプレゼントとかぶる恐れも。
その一方で、本質的ニーズで選んだプレゼントは、「えっ、びっくり!」と本人すら気づいていないもので、大喜びしてくれます。
アップル社のiPhoneなどは、まさに後者だと言えます。
あなたのサイトもこれを目指したいものです。
本質的ニーズを探るには、最低でも5~10人と人に対してインタビューします。
つまり、手間を覚悟しなければなりませんが、ユーザの本音を探ることができるので、「刺さる」サイトを目指すことができるのです。
現状調査で「なにかしなければまずい」と感じているなら、ぜひ実施したい調査です。

弟子入りインタビュー

弟子入りインタビューとは、あたかもインタビュアがユーザに弟子入りするかのような立ち位置でインタビューを行います。
ユーザが見せながら説明し、インタビュアはそれに対し不明点があれば質問をします。
ユーザーの本質を聞くために、「なにが欲しいか」といった表面的な質問は行いません。
あくまで、インタビュー中はユーザーの体験を聞き共感することに徹します。
そのことを通じて、後にユーザだったら〇が欲しいはずだと仮説を立案する手法なのです。

たった1人の調査でも発見の可能性がある

アンケート調査は数百、数千と母数が集まらないと調査の意味がありません。
その一方で、弟子入りインタビューの場合は、一人に対して行うだけでも自社のサイトに必要な”気づき”が得られることがあります。
なぜなら、その一人の隠れた本質的ニーズは、他の誰かにも共感できることが多いからです。
ということは、サイトにその本質的なニーズを反映させるることは有益なのです。
実際、調査を進めると同じような行動をとるパターンに収束します。
書籍「UXリサーチの道具箱」によると、経験則上のパターン数があると言われています。
 5人調査…1、2パターン
 10人調査…3、4パターン
 100人調査…7±2パターン
調査数は、上記を念頭に、あなたが行える調査対象者数を決めるとよいでしょう。

このように、インタビューは多くではなくたとえ一人であっても、深く掘り下げることで運営側も思わぬ発見が期待できるのです。

オンラインでも可能

対面での調査が基本ですが、ZOOMなどを用いオンラインでの手軽なインタビューでも実現できます。
ただし、対面に比べると残念な点があります。
たとえば、ちょっとしたしぐさや微妙な言葉尻に気づけず、「根掘り葉掘り」突っ込めず、貴重なヒントを得られないということもあり得ます。

「理由」は聞かない。根掘り葉掘り聞いて洞察をする

ユーザーには自身の体験だけを語ってもらいます。
つい、その行動の理由などを聞きたくなりますが、行動や感じたことなど事実だけを聞きます。
それらの情報を元に、理由は運営側で考えなければなりません。
なぜ、理由を聞いてはだめかと言うと‥‥
ユーザには、①ある事実(例:買わなかった)があり、②今のインタビューの状況も加味して解釈し、③理由(例:色が気に入らない)を説明しているわけですが、
②の解釈は状況によってコロコロ変わりあてになりません。
したがって、③の理由は聞く意味がありません。
①の事実だけを聞き、③の理由は聞かないにしましょう。
後にその理由を洞察するためには、根掘り葉掘り聞き(例:「そのときの状況はどうでしたか?」)くのです。
すると、より多くの状況がわかり、サイト制作での貴重なヒントとなります。

1.事前準備 

前ステップまでで得た情報からターゲットのニーズを予測します。その上で、ユーザになりきり、「こんな発言をするのでは?」と洗い出します。
それらをグループ分けし、見出しを付けてまとめておきます。
それを、インタビューでフォーカスを当てたいトピックとしてメモしておくのです。
一旦インタビューが始まったら、白紙の状態でのぞみます。すなわち、想定していた回答に固執してしまうと、目の前のユーザの感じ方を聴き取れなくなってしまうからです。
事前に想定はするが、インタビュー中はユーザへの共感に徹することです。

2.インタビューを行う

インタビューでは下記の1~5を繰り返すことで、あなたのビジネス分野でのユーザの本音を聞き出します。

1.インタビューアはユーザに弟子入りする あるトピックの教えを乞う

広い範囲からきき、そのトピックに近づきます。
たとえば旅行サイトであれば、「休日はどんなことをするのですか?」「旅行に行きますか?」「旅行はどんなときに行きたいと思いますか?」「どうやって探すのですか?」と広い→狭いの順に質問し、自社の商品に関連のあるトピックに誘導します。

2.ユーザは仕事を見せながら説明する

ユーザには、自分のスマホの写真やWebサイトを見せながら説明してもらいます。
その際、インタビュア側を忖度させず、自分の主観で話してもらうように心がけます。
チェックポイントは感情の動きです。たとえば、ユーザの悩みや不満、不安などを感じたら深掘りし、詳しく状況を聞きます。

3.インタビュアは、不明な点があればその場でどんどん質問する

ユーザは手取り足取りは教えてくれません。
もし、わからないことがあれば、その場で根掘り葉掘り質問します。

4.ひと段落したら、インタビュアーはユーザーに学んだことを話し、チェックしてもらう

かならず、聞いたことを自身の認識であっているか、インタビュアーはユーザに確認してもらいます。

5.新しいトピック1に戻る

トピックをすべて聞いたらそこでインタビューは終了です。

3.KJ法でデータ分析 アウトプットは仮説である

KJ法とは文化人類学者である川喜田二郎氏が考案した、エスノグラフィーの分析法です。
インタビュー結果という、分析しにくいものを分析する手法です。
難易度は高いですが、エスノグラフィー(行動観察)で重視されている「データそれ自身をして語らしめる」ということがこの手法の目的です。
まず、インタビューを文字起こししたものを用意してからスタートです。

1.データの単位化

インタビューの回答文章を、ひとつの文章ごとに分解します。

2.カード化:要約文

1に対して、一行見出しとして要約文を付けます。これをカード化といいます。

3.グループ化

カードの似た内容同士にまとめます。
グループ化できないものがあるときは、無理にどこかのグループに押し込めてはいけません。
川喜田氏は、この外れたカードが参考になることもあると言っています。

4.概念化

グループに見出しを付けます。

5.再グループ化

グループをさらにグループ分けし、大見出しを付けます
※グループの数が10個以下になるまで

6.図解化=KJ法A型

グループ相互の関連を図解化します。
たとえば、このグループとこのグループは類似点があるとか、因果関係があるなど、枠や矢印で図示します。
図解化のポイントは…
・因果
・類似
・対立
※上記の強さで線の太さを分けるなど、ビジュアル的にわかりやすくします。

7.文章化=KJ法B型

図解化したものを参考に文章化します。
その際、気づきがあればメモを残します。この気づきが仮説やアイデアに繋がります。

4.より確かな仮説にするために、調査を繰り返す

この調査で得られることは、正解ではなく仮説です。
したがって、この仮説をもとにキャッチコピーやWEBサイトといったプロトタイプを作成した上で、再度インタビューで確かめる必要があります。
この繰り返しがユーザ中心設計では重視されており、より確かで刺さるアイデアにつながるのです。
ただし、繰り返すといっても終わりはみえないので、ビジネスに役立つ仮説が見つかったらそこで終わりとします。

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加藤春樹

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WEB制作歴25年・受注件数約2,000件の実績をもつウェブディレクター・デザイナー・プログラマー。 日清食品やJR東日本、尚美学園大学など大企業/学術機関のウェブ制作にも多く携わってきた経験がある。 独自の「誘導中心設計」に基づくホームページを制作し、サイトからのイベント集客を2倍(1,500人→3,000人)にするなど、「売れるホームページ」作りに定評がある。

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